ジュエリーは得意な分野ではないのですが、このカメオはジュエリーと
いうよりもガラス工芸の粋パット・ド・ヴェール(直訳するとガラスのペースト。ガラスの粉を作り、練ったものを型に充填し焼成させて作る工芸ガラスの技法)
作品として、また歴史的記念品として価値の在る品です。
"RETOUR"の文字が刻まれておりますが、これは作品のテーマです。
英語のリターンにあたる『帰還』、『返還』を表すフランス語で、普仏戦争での敗北により1870年からドイツに占領されていたアルザス地方が
1918年にフランスに返還されたことを祝す心が込められているのです。
ブルーの地に白で浮き彫りされた少年と少女の絵柄も意味深く、
大きなリボンを頭につけた少女はアルザスを表し、雄鶏を頭に載せた
少年はフランスを象徴しています。フランスがアルザスを喜んで迎える
「お帰りなさい!」のキスをしており、その周りの上下左右にローリエを
配し、勝利を祝っているのです。
この小さなハート型のメダイユに、なんと大きな歴史とフランス人の心が刻まれていることでしょう!
石留めとチェーンは18金ホワイト・ゴールドで、最近パリで誂えました。
長さが調整できるようにリングが一つ余計に付いております。
最後の画像はアメリカのサイトruby laneで見つけたページです。
*該当ページへのリンクを掲載しておりましたが、ページが既に存在しないようですのでリンクを削除いたしました。悪しからず!
作者のEdmond BECKER(1871-1971)は、パリ生まれのアーティストで
メダイユ、ジュエリー、木版画、彫刻など細かな彫物で有名です。特にアールヌーヴォー期のジュエリーは高級宝飾店ブシュロンに重用されたとのことです。オルセー美術館や大英博物館にも作品が所蔵されている知る人ぞ知る大家です。
【サイズ】 厚さ(台座含む):5mm 幅:2.8cm 天地:2.5cm
チェーンの長さ:19cmx2
【年代と国】 (本体)1918年 フランス
【サイン】 表面に型でBECKER