金赤に金銀彩で草花や蝶が蒔絵風に描かれた実にジャポニズム全開
のガラス器です。ベースの赤はライティングによってかなり朱色っぽく
見えますが、実際はもう少し落ち着いたガーネットのような色です。
マットな金彩と所々象嵌したように銀彩が入っているのも日本の印籠
や 刀の鍔などに見られる技法を真似たのかも知れません。
銀彩は元々いぶし銀風のようですが、酸化によって黒ずんでおります。
銀磨き液をつけて磨いてみましたら、黒ずみは少し取れました。
(掲載写真はまだ磨いてない状態です。)
このヴェール・ドー(verre d’eau 水のグラス)と言われる水差しセットは
19世紀半ばから20世紀初頭にかけて、ヨーロッパの中流以上の家庭
の寝室に無くてはならない《おやすみセット》だったようです。
Baccarat、Saint-Louis、Bohèmeなど全てのクリスタルリーが趣向を
凝らしてこうした水差しセットを多数作りました。
水用の大きなキャラフ1、オレンジの花のエキス用キャラフ1、
ゴブレット2、シュガーポット1、トレー1の6点でフルセットです。
因みにオレンジの花のエキスは神経を沈めたり、胃を落ち着かせる
薬効がある為、入眠剤として一般的に用いられていたようです。
ウィスキーの水割りセットとして使うのもおしゃれですし、それぞれの
アイテムを単独で使ったり、使い道を考えるだけでも楽しいですね。
最後の画像はG.Cappa著『ヨーロッパのガラスの達人』のバカラの
ページからの抜粋です。
【サイズ】 高さ(全体):大キャラフ 23cm/小キャラフ 13.2cm
ゴブレ 11.2cm/シュガーポット 14.5cm/トレー 2.4cm
直径(最大):大キャラフ 13cm/小キャラフ 7.5cm
ゴブレ 7cm/シュガーポット 10.2cm/トレー 26.7cm
【年代と国】 1880年代 フランス
【サイン】 ありません。
【状態】 概ね良好。ゴブレの口縁部の金彩に金彩に剥げあり。
小さいキャラフの口に窯キズあり。