エミール・ガレはアール・ヌーヴォーのガラス作家として広く知られておりますが、24歳から22年間にわたり陶芸家としても多くの個性的な作品を残しております。
本品は変わった造形に中世風な身形の人物画や文言が絵付けされた珍しい陶器です。
文言はPLUS PENSER QUE DIRE プリュ パンセ ク ディール 『言う以上に思う』と書かれており、フランス中世の王族で詩人として知られるシャルル ・ドルレアンの有名な詩のリフレインです。
それを知って初めてこの陶器の形や絵柄に「なるほど…」と納得がいきました。
まず、形はパンジーの花を模っていることが分かります。
パンジーはフランス語でPenséeパンセ（思い）、詩のPenserをもじったのですね。
次に絵柄の男女、これはシャルル・ドルレアンと妃のマリー・ド・クレーヴを表しているようです。
資料画像はこのカップルを描いたとされるタピスリーで、ガレはこれをイメージして絵柄をデザインしたと想像されます。
少年時代から文学に傾倒し、象徴主義的な思索家でもあったガレらしい作品です。
壁掛け用の紐を通す穴があり、実用されていた紐を残してありますが、器として使う場合には簡単に外せます。
| 【サイズ】 | 高さ:5.5cm 幅:(最大)19.8cm |
| 【年代と国】 | 1880年代 フランス |
| 【サイン】 | E ǂ G déposé Emile Gallé à Nancy |
| 【状態】 | 良好。釉の小さなカケ、細かな貫入あり。 |
