ルネ・ラリックが1931年に創った作品で戦後復刻されておりません。
暖炉の上などに置けるランプとしてデザインされたらしく、極端に奥行
の少ない平べったいフォルムがユニークです。
ペアーで使えるように左右の向きが違う2種類の型があり、
本品は右用となっております。
BACCHANTE(バッカント)は、ギリシャ神話の酒神バッカスを取巻き、
フォーヌ(=サテュロス半獣神)と共に酔い痴れて踊る巫女達のこと
ですが、転じてワインの女神のように象徴化され、ワインの銘柄にも
しばしば用いられます。
ラリックの作品では、バッカントの群像がデザインされた花瓶
“BACCHANTES”が有名ですが、他にも香水壜や高級寝台列車の
内装パネルなどのモチーフとして使われています。
このランプのバッカントは長い髪をなびかせ、葡萄の房を片手に
半目を閉じて踊る姿が躍動的に表現されており、種を明かせば
型押しで裏から陰刻し、彫った部分をサティネしただけなのに、
驚くばかりの立体感があり、灯りの下でいっそう艶めかしく、
ため息の出るほど美しい作品です。
ただ(もうお気付きの方もいらっしゃることでしょう)、このランプは
実は惜しくも疵物なのです。まず、オリジナルはシェードもガラスです。
また本来矩形のプラックそも上部が丸くカットされております。
メタルのベースはニッケルメッキが剥げてひび割れたようになって
おり、フレームも少々歪んでおります。おそらく高い所から落とされた
のでしょう。辛うじてBacchanteが彫られた部分は奇跡的に破壊を免れ
たので、プロに破損部分をカットしてもらったようです。
肝心の部分が残っていたことに感謝しつつ、シェードの無い状態で
購入し、未使用の古い布張りのシェードをアレンジしました。
あまりに素晴らしく、稀少な作品ですので、闇に葬るには忍びないと
考えました。因みにこの作品、一度だけパリのルーブル・デザンティ
ケール(超高級アンティークモール)で見たことがありますが、我々
庶民に買えるような値段ではありませんでした。
上記の事情をお含みいただいた上で、尚かつ気に入って下さる方に
お譲りいたします。
【サイズ】 [全体]高さ:43cm 幅(最大):24cm 奥行(最大):15.5cm
[ガラス]高さ(最大):18.7cm 幅:11cm 厚さ:1.8cm
【年代と国】 1931年 フランス
【サイン】 R.Lalique France