ジヴレされた無色のクリスタルにアシッドによるグラヴュールで、枯れた葉を数枚残し赤い実をつけた木の枝の図が浮き彫りされ、更に金彩とエナメル彩で仕上げられた美しい絵柄は、アールヌーヴォー風であると同時に日本的です。
口縁の波型に仕切られた部分はジヴレされずクリアに残されており、和陶器の灰釉を掛けたような景色をねらったものと思われます。
サインは“A LA PAIX J.Mabut”と彫られており、多くの場合J.Mabutという作家の作品と思われているようですが、Jules Mabutというのはパリのオペラ通り34番地に19世紀末から20世紀初頭にかけて存在した高級工芸品店“A LA PAIX”の創始者の名前です。
この店は商品のデザイン企画室を持ち、オリジナル品も販売しましたが、制作は有名メーカー各社に発注したとのことで、特注で作らせた本品のようなガラス装飾品には屋号とオーナー名が入っております。
資料画像は1901年のクリスマス頃のこの店の広告で、オーナーの名前は1900年に店を買いり、暫くの間同じ屋号で営業を続けたGEO. (Georges) ROUARDの名前に変わっています。
【サイズ】 | 高さ:11.6cm 口径:7cm 胴径:10cm |
【年代と国】 | 19世紀末 フランス |
【サイン】 | 底に金彩でA LA PAIX J.Mabut 34 avenue de l'OpéraPARIS Modèle déposé |
【状態】 | 良好。 |