フランスでは苺の季節になると、家庭でもレストランでも専ら苺がデザートの定番、主役になります。
冷蔵庫も無く流通事情も良くなかった昔は、当然ながら季節限定のよほど貴重な果物だったようで、苺専用の豪華で美しいサーヴァーが使われ、銀器メーカーは競って凝ったものを作ったのです。
また欧米の食卓では何でも大皿や大鉢から主人や主婦が個別の器に取り分けて皆にサーヴィスするのが慣わしだったため、各種のサーヴィス用カトラリーが必要でした。
本品はフランス製ですがロシア風と当時呼ばれた柄が細い優雅なスタイルで、ロシア風銀器の常で銀メッキではなく銀製です。
シャベル部分は苺の酸で銀が黒く変色するのを防ぐためにヴェルメイユ(銀に金メッキをかけたもの)になっていたようですが、今では辛うじて内側全体に薄っすらと金色が残り、手彫りされた花とロカイユ模様のグラヴュール部分だけはっきりと金が残っております。
Emile HUIGNARDという銀器メーカーによって19世紀末に作られたものです。
因みに、今更気付いたのですが姉妹社の銀器コーナーに掲載している
『ヴェルメイユのティースプーンセット 19世紀末フランス』も同じメーカーの製品でした。ご参照ください。
【サイズ】 | 長さ(全体):23cm シャベル部分 :9.8cmx8.5cm |
【年代と国】 | 1880年〜1900年 フランス |
【サイン】 | シャベルに猪の頭(フランスの銀の刻印)と メーカーマークの刻印 |
【状態】 | 良好。使用による小疵あり。 |